糖質を抜くほど痩せない?筋肉は"糖の貯蔵庫"だった。耐糖能から考える本当のダイエット
- medicalphysiolab
- 7月14日
- 読了時間: 7分
まず結論からお伝えすると、ダイエットで本当に目指すべきなのは「糖質を抜くこと」ではなく、「糖質を上手に使える身体をつくること」です。
近年は糖質制限が当たり前のように語られ、「お米は太る」「夜は炭水化物を食べない方がいい」という情報を目にする機会が増えました。
実際、私のところへ来られるお客様の中にも、「ダイエットのためにお米を食べるのをやめました」という方は少なくありません。
もちろん、糖質制限には一定の効果があります。糖質を減らすことで体重は比較的早く落ちます。
しかし、その数字だけを見て「糖質=太る」と考えてしまうのは少し早いかもしれません。
私はこれまで数多くの方のダイエットをサポートしてきました。その中で感じることがあります。
糖質を極端に抜いている人ほど、途中から痩せなくなってしまうケースが非常に多いということです。
今回は「耐糖能(たいとうのう)」という少し聞き慣れない言葉をテーマに、なぜ糖質を抜きすぎると痩せにくくなることがあるのか、そして本当に目指すべき身体とはどのようなものなのかを、科学的な根拠も交えながら解説していきます。
耐糖能とは「糖を上手に使う能力」
耐糖能とは、簡単に言えば食事から摂った糖質を適切に処理する能力のことです。
ご飯やパン、麺類などを食べると、糖質はブドウ糖に分解され、血液中へ入ります。
すると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓へ運びます。
運ばれた糖はエネルギーとして使われたり、「グリコーゲン」という形で蓄えられたりします。
この流れがスムーズに行える状態を「耐糖能が高い」といいます。
逆に、糖を処理する能力が低下すると、血糖値が高い状態が続きやすくなり、将来的には糖尿病や生活習慣病のリスクにもつながります。
つまりダイエットだけでなく、健康を考えるうえでも非常に重要な能力なのです。
糖質制限をすると耐糖能は低下する?
ここで誤解しないでいただきたいのは、「糖質制限は悪い」という話ではありません。
問題なのは極端な糖質制限を長期間続けることです。
人間の身体はとても賢くできています。
使わない機能は、省エネモードに切り替えます。
糖質をほとんど食べない生活が続くと、身体は「糖を処理する必要が少ない」と判断し、その環境に適応していきます。
研究では、この適応によってインスリン感受性や糖を利用する仕組みが一時的に低下することが報告されています。
この状態は**「生理的インスリン抵抗性」**と呼ばれ、病気ではなく身体が糖質制限に適応した結果と考えられています。
実際、ケトジェニックダイエットを続けている人が糖負荷試験(OGTT)を受けると、一時的に血糖値が高く出ることがあります。
しかし数日間しっかり糖質を摂取すると改善するケースも多く、これは糖尿病とは異なる現象です。
つまり身体は、「糖質を食べない生活」に合わせて変化しているだけなのです。
数多くのお客様を見てきて感じること
私は日々、多くのお客様のダイエットをサポートしています。
その中で感じるのは、糖質を極端に減らしている方ほど、途中から体重が落ちにくくなることが少なくないということです。
最初の1〜2週間は順調に体重が減ることがあります。
しかし、その多くは体脂肪だけではなく、筋肉や肝臓に蓄えられていたグリコーゲンと、それに結びついていた水分が減っている影響も大きいのです。
その後、
「最初は順調だったのに急に痩せなくなった」
という相談を本当によく受けます。
もちろん原因は一つではありません。
ただ共通しているのは、
・トレーニングの重量が落ちる
・疲れやすくなる
・日常生活で動かなくなる
・筋肉量が減る
こうした変化が起こり、結果として消費カロリーまで下がってしまっているケースです。
糖質を減らしたことで摂取カロリーは減っていても、「消費する身体」まで弱くなってしまえば、ダイエットは思うように進みません。
筋肉は「糖の貯蔵庫」
ここで重要になるのが筋肉です。
私はお客様に、「筋肉は身体の中で一番大きな糖の貯蔵庫なんですよ」とお話ししています。
食事から摂った糖は、インスリンの働きによって筋肉へ運ばれます。
そして筋肉の中でグリコーゲンとして蓄えられ、運動するとエネルギーとして使われます。
つまり筋肉は、糖を安全に保管し、必要な時に取り出せる大きな貯蔵庫なのです。
倉庫が大きければ、たくさんの荷物を保管できます。
逆に倉庫が小さければ、すぐにいっぱいになってしまいます。
筋肉も同じです。
筋肉量が増えれば、糖を蓄えられる容量も増えます。
その結果、同じ量のご飯を食べても、より効率よく糖を処理できる身体になるのです。
筋トレが耐糖能を改善する理由
筋トレには筋肉を大きくするだけではない、大きなメリットがあります。
それがインスリン感受性を高めることです。
インスリン感受性とは、少ないインスリンでも糖を筋肉へ取り込める能力のこと。
筋肉には「GLUT4(グルコーストランスポーター4)」という糖を運ぶタンパク質があります。
筋力トレーニングを続けると、このGLUT4の量や働きが改善することが分かっています。
さらに面白いことに、筋肉は運動によって収縮するだけでもGLUT4が細胞の表面へ移動し、インスリンとは関係なく糖を取り込めるようになります。
つまり筋トレは、
糖を我慢する身体ではなく、糖を使える身体を作っているのです。

科学的にも筋肉は最大の糖の貯蔵庫
ここまでの話は、私の経験だけではありません。
健康な人では、**食後に筋肉が取り込むブドウ糖は全身の約70〜80%**を占めることが知られています。
つまり骨格筋は、人間の身体の中で最も大きな糖の利用・貯蔵組織です。
また、アメリカ糖尿病学会(ADA)やアメリカスポーツ医学会(ACSM)は、2型糖尿病の予防・改善のために筋力トレーニングを推奨しています。
さらに複数のメタ解析では、週2〜3回のレジスタンストレーニングを継続することで、
インスリン感受性の改善
HbA1c(過去1〜2か月の平均血糖値)の低下
空腹時血糖の改善
などが報告されています。
また、筋肉量が多い人ほど2型糖尿病の発症リスクが低いことを示した疫学研究も数多く存在します。
筋肉を増やすことは、見た目を変えるだけではなく、健康そのものへの投資でもあるのです。
糖質は敵ではない
ここで私が一番伝えたいことがあります。
糖質は太る原因ではありません。
糖質は、筋肉を動かし、脳を働かせ、運動のパフォーマンスを支える大切なエネルギー源です。
もちろん、食べ過ぎれば太ります。
しかし、それは糖質だけではなく、脂質でもタンパク質でも同じです。
本当に大切なのは、「糖質を抜くこと」ではなく、「糖質を上手に使える身体をつくること」。
そのためには、
筋力トレーニングを行う
日常生活でしっかり身体を動かす
十分なタンパク質を摂る
活動量に見合った糖質を摂る
睡眠をしっかり確保する
こうした基本を積み重ねることが何より重要です。

まとめ
ダイエットというと、「何を食べないか」に目が向きがちです。
でも、本当に考えるべきなのは「何を減らすか」ではなく、「どうすれば身体がエネルギーを上手に使えるようになるか」ではないでしょうか。
糖質を極端に制限すれば、一時的に体重は落ちるかもしれません。
しかし、長期的に見れば耐糖能の低下やトレーニングパフォーマンスの低下、筋肉量の減少によって、かえって痩せにくい身体になってしまう可能性もあります。
だから私は、お客様にも「ご飯を抜きましょう」とはほとんど言いません。
むしろ、「糖質を食べても太らない身体」ではなく、**「糖質をエネルギーとしてしっかり使える身体を一緒につくりましょう」**とお伝えしています。
ダイエットは、糖質との戦いではありません。
筋肉という大きな「糖の貯蔵庫」を育て、耐糖能を高め、エネルギーを効率よく使える身体をつくること。
それこそが、リバウンドしにくく、健康的に痩せ続けられる一番の近道なのです。




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